被害妄想

20歳の底辺大学生が一生懸命生きているブログ

結局青汁かよ!の話

私は今、半引きこもり状態である。

大学は夏休みでバイトもそんなに入れてない。教習所には通っていたが不登校になって早2ヶ月が経つ。そんな訳で昼まで寝て、起きてもゴロゴロ寝転がりながらテレビを見ているような生活が続いている。

昔、小学生の頃。学校を休む度に、ガンコちゃんやらストレッチマンやらのNHK番組を「昼間から学校も行かずにこんなテレビ番組見てる」などと謎の罪悪感と優越感に浸りながら眺めていたが、大学生にもなると流石、まったく何の感情も浮かべずに鼻をほじりながら見ることが出来る。そもそも今はもうNHKなんか見ないし。

今ハマっているのは通販番組だ。特に青汁や健康サプリメントのCMなんかは堪らない。テレビを見ていると突然ドキュメンタリー番組のようなものが始まり、時には笑い時には泣き波乱万丈な人生をVTRが映し、こっちがスタンディングオベーションをする一歩手前で「実は今のは青汁のCMなんですよ」とネタバラシをしてくる。こっちなんかもう丸々映画一本見たくらいの気持ちでいるのに今のがCM。ぴあフィルムフェスティバルくらいなら賞が獲れるんじゃないだろうか。CM部門では獲れないと思うけど。

もっと驚くべきことはその認知度の高さである。先日、友達に映画を見たと言ったらどんな映画だったか聞かれたので

「青汁のCMみたいな映画だったわ」

と言ったら、友達は深妙な顔をして

「なるほどねぇ、だったらTSUTAYAで出るの待つわ」

と言った。通じるのか。まさか通じるとは思わなかった。私がよほど変な顔をしていたのか、友達はビックリした顔になって

「え?TSUTAYAって新作1年くらいで出るよね?」

とトンチンカンな事を言ってきたので笑った。

ちなみに家に帰って同じ事を母親に言ったら、

「そうなの。じゃあwowwowでやるの待とうかな」

と返ってきた。ウチの方が裕福である。ちょっと優越感を感じた。

 

 そんなどうでもいい優越感は置いておいて、そんな青汁CM的な話(と書いて“ちょっといい話”と読む)でもしようかと思う。ここまで来てやっと本題。

 

少し前に、小学生くらいの男の子を見かけた。近所に小学校があるので小学生を見るのは別に珍しいことではないのだが、その小学校のハナタレ坊主とその男の子とでは明らかに纏っている空気が違う。

ピシッと整えられた短髪に上品な顔立ち。キチンと糊付けされている半袖のシャツと紺色のハーフパンツ、そこから伸びているキズ一つない細い足。

何処かのお金持ちのご子息のような佇まいのその少年は、「管理棟」と呼ばれる小さな時計台のある建物の前でじっと何かを待っていた。

私がコンビニに行く途中に見かけた少年だったのだが、用事をすませ家まで帰る道にまだ居る。誰かを待って居るのか?声をかけた方がいいか?そう懸念していると、急に少年がパッと顔を上げ、

「おじいちゃん!」

と叫んだ。少年の目線の方を見て見るとなるほどこれまた品の良さそうなおじいさんがゆっくり歩いているのが見えた。

「おじいちゃん!どこに行ってたの?ずっと待ってたんだよ!」

「ごめんねぇ、寂しかったねぇ。」

映画のワンシーンのような会話である。実はこの会話を聞いただけで既に私はグッと来ていた。「母を訪ねて三千里」を見ているような気持ちと言えば伝わるだろうか。(因みに私は「母を訪ねて三千里」を見たことがない)

とにかくこの少年には何かとてつもなく悲しい過去があるのではないか、父は蒸発して母は病気がち。少年はお金が必要だがこのご時世、小学生は働くことが出来ない。そこで生まれてから一度も会ったことのない父方の祖父にお金を援助してもらうべく養子にーーー。

というのは私の妄想だが、まぁとにかくそんな背景が見えるくらい映画チックだったのだ。

 2人はしばらく管理棟で何かを話していたが、おじいさんが「帰ろうか」というと2人は手を繋いで何処かへ去っていった。これでお仕舞い。実に感動的な話だ。

そして3日後、私は再びその2人と再会する。

今度は管理棟じゃない。私の実家でだ。

「この子は身の上が複雑で、父親が蒸発し母親は病気がち。まだ小さい妹が居り、このままでは食べて行くことが出来ません。私が面倒を見ているのですが何せ老い先の短い人生。この子が公に働きに出られるようになるまでに死んでしまいます。そこでお願いがあるのですがこの子をお宅で雇っては頂けないでしょうか」

と言われた訳ではない。

朝方、インターホンが鳴ったので出てみると件の2人が立っていた。相変わらず上品そうな佇まいで顔には微笑を浮かべている。こちらもつられて微笑みを浮かべるとおじいさんが言った。

「あなたは神を信じますか?」

微笑む私、微笑むおじいさん。少年は手に持っていたパンフレットを「どうぞ」と私に手渡した。そのパンフレットには『○○教(ちょっと怖くて実名は書けない)』という大きな文字。

ドアを閉めた。閉める間際に必死で絞り出した「結構です」の声が2人に聞こえていたかどうかは分からない。ただ、こういう反応は慣れているのだろう。特に食い下がるような様子もなく、2分後ミラーを覗いた時にはもう姿は見えなかった。これでお終い。

最後の最後で「宗教かよ!」とがっかりする話。どうだろうか、これこそまさに青汁CM的な話ではないだろうか?ちょっといい話というのは人を惹きつけるものだけど、こういうちょっと間抜けなオチがある方がしんみりしなくて良い。

 

結局何が言いたいのかというと、今日も1日青汁を飲んで頑張ろうということである。